小林めぐみ『食卓にビールを』

女子高生で幼な妻でおまけに若手作家である主人公(名前なし)がフニャモラと日常を過ごすうちに決まってスーパーナチュラルなモノが飛び込んできて、でも特に動揺もせずなんとなくやり過ごす、というようなお話を集めた連作短編集。
これは今までに読んだことのない感じで、なかなか面白かった。独特のフニャモラ文体はダサくなる一歩手前で踏みとどまって心地いい脱力感を提供してくれるし、不思議ちゃん日常コメディみたいな話に唐突にSF的な要素が介入して来る、その唐突さがかなり面白い。最後の短編で一応一冊としてのオチをつけて、ついでにそれまでほとんど顔が見えなかった某人物に顔が現れるってな趣向も気に入った。
一冊通した満足感が最高な本なのだけど、敢えて集中のベストを挙げるなら、全くなんのきっかけもなしに話がSFに移行する展開が素晴らしい「わらしべ長者篇」、SFというより不条理短編に近い趣で主人公の平常心がとても楽しい「食卓にビールを 宇宙ハウス篇」あたりかな。