G・K・チェスタトン『ブラウン神父の童心』

不恰好で目立たない神父さんが事件に出くわしては切れ味鋭い推理を披露する連作短編集の第一弾。海外本格ミステリの古典ですな。それを今更読んでいるわけですが、さすがに古典なだけあって各編に共通する幻想的なんだけどちょっととぼけた雰囲気は味わい深い。ポッと出のキャラクターまでちゃんと描き込まれてるわりに名探偵たるブラウン神父の影が薄いのも面白い。この人の、まるでルーチンワークをこなすような(それでいて情はこもってる)推理の仕方はちょっと他では見られないかも。
集中の個人的ベストは、オチ知った上で読んだにも関わらず展開の不均等さにハラハラさせられた「見えない人」、(偽)歴史ミステリとしてかなりの完成度の「折れた剣」あたり。全体として、平穏→謎の出現→解決(そして再び平穏)ってな本格ミステリの王道の流れを崩し崩して進んでいくような展開が好み。