山口雅也『PLAY』

ゲームや“遊び”をネタにした短編集。あの山口雅也の『奇偶』に続く新作!ってな感じで勢い込んで取り掛かると肩透かしを食らうこと請け合いの“そこそこ”な出来具合。個人的に山口雅也の作風がそれほど趣味でないこともあってこの力の抜け方は逆に好ましかったけれど、集中に共通する“現代人の心の闇”みたいなテーマに作者がちっとも思い入れなさそうなのはいい方向に働いているようなそうでないような。以下個別感想。
「蛇と梯子」インドのボードゲーム「蛇と梯子」で遊んでた息子が突然サル化!彼を治すために一家全員で「蛇と梯子」で遊ぶ療法をすることになったが……というお話。ゲームの進捗状況を逐一描写する終盤が狙って清涼院流水をやっているような不気味なムードでなかなか面白い。この部分だけもっと長く読みたかった。オチはつまらん。
「黄昏時に鬼たちは」引き篭もりから脱出するために隠れ鬼をしているサークル内で殺人事件が!というお話。引き篭もりをネタにする手つきが異常に冷静で“生温い視線”なんて一切無し。この冷静さのおかげでトリックが上手に決まってるので良いでしょう。