船戸与一『山猫の夏』

対立を続けるアンドラーデ家とビーステルフェルト家に支配されたブラジルの田舎町。そこの酒場で働く主人公の前にある日現れた謎の男“山猫”。主人公は彼に雇われ、ビーステルフェルト家の娘を取り戻す任務を一緒にこなすことになるが……というお話。
慣れないジャンルの小説ながら読みやすくて、長い物語にちゃんと乗れた。ただ、書かれたのが結構前だからかどうか知らないが、山猫の最強っぷりがカッコよくて惚れ惚れするというよりほとんど笑ってしまう域に達していて、そのへんちょっと合わなかったかも。あと、山猫に影響されて主人公が変化する、というあたりの描写が弱いかな。ラストでわかる山猫の目的は、これまた笑ってしまうんだけど素敵なので可。
で、あれですよ。この小説に足りないのはヒロインだな。ソフィアは魅力なさすぎで問題外だし。