松尾由美『バルーン・タウンの手品師』

人工子宮の利用が普及した近未来で敢えて自然な妊娠‐出産を選択した妊婦達の町バルーン・タウンで起こった事件の謎を、妊婦探偵暮林美央がパパッと解決するシリーズ短編集第2弾。妊婦の町ならではの真相を用意することによってバカミス的破壊力を演出できていた前作と違って、いまいち特殊な舞台設定が活かされていないのが不満。「オリエント急行十五時四十分の謎」におけるすれ違いの謎くらいかなあ、活かされてたのは。
とは言え、楽しい楽しい。不発なのも多いけどすっとぼけた感じがよろしいギャグと言い、どうにも間抜けな人達が繰り広げる推理合戦の図と言い、気を抜いて楽しむには最適なミステリですな。「埴原博士の異常な愛情」のオチのつけ方に見える「お前らサイコパスに夢見すぎ!」とでもいうようなツッコミの視線も好き。あ、あと今給黎くん再登場は嬉しかったな。