芝田勝茂『進化論』

大学院生・塩瀬祐介の教え子であり、互いに密かな恋心を抱き合っている少女が処女懐胎で「神の子」を身ごもった!一方、祐介が毎夜見る夢には未来の自分が旧人類に取って代わろうとする「神の子」と敵対し、戦争に携わっている様が現れ……というお話。どうにも軟弱っぽい講談社の「YA! ENTERTAINMENT」叢書(子供向け)にトンデモ終末SFキター、と思ったらこれって97年に出た本の再版なんですね。ちょっと拍子抜け。いやしかし、子供に読ませるのはどうか?と思ってしまうほどのトンデモっぷりは是非とも支持したい。ほとんどデタラメなまでに壮大な世界観を拡げまくって、その壮大さを収束させつつ少し外した地点に着地するこの結末はなかなか感動的なのではないかな。結局そんな卑小な世界の話になっちゃうのか!という印象もあるけど。
個人的に一番印象に残ったのは「新人類」の死体をよく見たら……のところ。こういう感傷的な、理屈っぽくない象徴性は好きだ。芝田勝茂って他の本も読みたいんだけどあんまり売ってないんだよなあ。とりあえず新しく文庫化したらしい『ふるさとは、夏』を読もうか。