村崎友『風の歌、星の口笛』

死なないはずのペットロボットが死んだ事件を捜査する探偵、はるばる調べに来たら既に滅んでいた地球の兄弟星を探索する調査員、交通事故で負ったケガが治って病院を出て来ると確かに存在した自分の彼女のことをみんな知らなくて、これはおかしい、と奔走する青年、の三つの視点から交互に描かれるお話。第24回横溝正史ミステリ大賞受賞作ですが、SF要素のあるミステリと言うよりはミステリ要素のあるSFだなこりゃ。何で作者はこんなものをこの賞に送ってきたんだろう……と思ったら、この作者が前回送ってきたのは学園ミステリだったそうで、ふーん、じゃあ根っからのSF者というわけでもないのか。
そんなことはどうでもよくて、やたらエモーショナルに描かれる夢見る気持ち、思いを馳せる気持ち等々がいい感じに懐かしさを醸し出す良いSFだと思います。そのロマンチシズムは少々わかりやすすぎる嫌いもあるものの、最後にはちゃーんと壮大でありながら爽やかさを感じさせる読後感が残るので問題なし。面白かった。三つの挿話がどう繋がるのか?というのにはすぐ見当がつくので、ミステリとしては壁や天井に張り付いたミイラの謎がメインとなるのですが、その真相は何ともファンタスティック!ミステリ読みはこのトリック(?)のためだけにこの本読んでもいいと思う。特殊な状況下が絵的・概念的にトリックにポエジーを含ませることに寄与してるようなのは僕、大好きです。ちょっと思ったのだけど、こういうような状況を作り出す装置がドラえもんひみつ道具にあった気が……。まさか作者はそこからアイデアを?だとしたら素敵だな。