夏樹静子『Wの悲劇』

大会社の会長一族が別荘でのんびり正月を過ごしていた所に事件発生。なんと、会長の孫が会長を刺し殺してしまったのだ!居合わせた面々は彼女の犯行を隠蔽し、強盗の仕業に見せかけようとするが……というお話。つまり、倒叙ミステリの犯人側が複数いるバージョンですね。綿密なはずの隠蔽工作に穴が……という倒叙モノの王道パターンが不足してるのは不満なものの、隠蔽工作仲間の中に事態を発覚させようとしてる輩がいるみたい……という展開は珍しくてちょっと面白い。でもこの趣向、上手く使えてない気がするなあ。そもそもキャラが立ってない警察側の視点で進む部分がこんなにはいらないだろう。隠蔽工作側の視点をもっと増やしたほうがサスペンスが盛り上がったんじゃないかな。終盤のどんでん返しの連続がいちいち唐突なだけで意外性に欠けるのもそのへんが原因な気がする。
あと、ロマンチック!なムードを漂わせるために犯人とかが決まってる感じがあってちょっとげんなり。いやロマンチックなのは好きですけど、なんせ古い作品なんでそのセンスが……。主人公もほとんどいる意味ないし。って、あれ?貶してばっかりだ。中盤はわりと面白く読んだんだけどなあ。面白くなりそうな気配はあったものの、結局最後まで面白くならなかった、って感じか。