田中啓文『星の国のアリス』

少女アリスちゃんの乗り込んだ宇宙船で吸血死体が発見される。どうやら吸血鬼がこの船に乗ってるみたい!こわーい、誰が吸血鬼なのー?と乗客の皆さん疑心暗鬼に陥るお話。あらすじからわかるように一応ジャンルとしてはSFミステリなのだけど、何せ祥伝社400円文庫からのリリースなもので“意外なオチ”にしても“一人ずつ死んでいく展開のハラハラ感”もきっちり400円レベル。おまけに著者お得意のダジャレもなし(僕が気付かなかっただけかもしらんが)。期待してたのにー。
いやでも面白かったんですよこれ。いかにもな400円文庫っぽさにしてもあまり嫌味のない種類のものだし、この人のもう一つの得意分野であるグロ描写に関してはすこぶる満足のいくものだったから。睾丸型宇宙人の気色悪い造形なんてのはいつものことだけど、ワープ航法の描写までグロ方向に引き込んでしまうのはさすが。感心しました。