畠中恵『百万の手』

新しいのが出るたびに話題になってる創元社の「ミステリ・フロンティア」第四弾。でも、あれー?この人こんなに下手な人だっけ。一応、家庭に問題を抱える中学生の主人公が親友の家の火事という事件に出くわして以来、深刻な事態に巻き込まれていく、っていうストーリーがあるものの、先の展開なんて全く気になりません。頭のおかしい人達が勝手に自分達だけで盛り上がって読者を置いてけぼりにしたまま暴走する様をひたすら見せられるというなかなかに辛い読書体験を味わってしまった。サスペンス的興趣の盛り上げ方、社会的テーマの盛り込み方、登場人物の心理描写、全てにおいて間違っている感じで、なんかもう根本的に小説作法がなってないみたいだ。
しゃばけ』(→感想)がそこそこ面白かったのは時代モノというジャンルに属することに助けられていた(セリフの言葉使いとかの点で)からというただそれだけだったのかなあ。とりあえず登場人物の行動原理にせめてもう少し説得力を持たせてくれなきゃとても読めませんよ。あと、主人公の心中での思いを全部カッコで括ってセリフ的に表現するのはやめちゃどうか。やたら稚拙な感じを醸し出してしまってると思う。