宮部みゆき『火車』

とっても久しぶりに読んだ宮部みゆき。カード地獄が絡んで行方不明になった女性を休職中の刑事が追ううちに、明らかになってくる様々な意外な事実。“彼女”は今一体どんな想いを抱えているのか……みたいな話。いろんな所で宮部みゆきのベストと謳われている気がする本作ですが、そんなんでもなかったなあ。あの場面で終わりにしたのはとても上手いと思うけど。テーマに関係する部分では、全体的にあまり奥に踏み込まず、読者の想像に任せるような抑制の効いた描写がされていて、それが僕には何だか物足りなかったってのがある。耳触りがいいだけな気がしちゃって。あと、頻出する比喩表現がいちいち「ん?」ってな感じに目が止まってしまうもので、しっくりこなかったってのもあるかな。
勿論、リーダビリティの高さ、いい意味での読みやすさや、さりげなくも心に残る脇キャラの人物描写なんかはさすが日本トップレベルの娯楽小説家だなあと感じさせるそつのなくも優しい印象のもので、賞賛されるべきだと思う。ただ、僕としてはもうちょっとクドい部分があったほうが好みだってことで。ああ、しかしこれ書かれたの1992年か。時代を感じるなあ。