グラディエーター

僕はダメだなあ、これ。こんなに気持ちの良くない娯楽映画は久しぶり。とりあえず、将軍から剣闘士に堕ちるも復讐を果たす主人公をもっと好感の持てる人物に描いてくれないと。いや、好感が持てないのにはラッセル・クロウの顔が嫌いという僕の趣味が多分に影響していて、単に僕の運が悪かったということもある。でもそれが無くてもこの主人公の人物像は実に薄っぺらな描写しかされてないと思うな。“家族愛”にしても“前帝への忠誠心”にしても。そのせいで主人公のために命を捨てたりする仲間達の行為に全く説得力を感じられないのだからまずいでしょう。
更に不満なのは主人公のにっくき仇となるきコモドゥス帝の扱い。か、かわいそう!余りに不憫で涙が出るかと思った。この印象にも僕の趣味が多分に影響しているけれど、それだけじゃなく、映画の作りはコモドゥスに同情する人が一定量出てきてしまっても仕方ないものになっているくせに、そのストーリーは彼に感情移入してしまった人に対してはひたすら不快なものでしかないというところに問題がある。ナイーブで歪んだ性格の青年皇帝という役を実にそれっぽく演じるホアキン・フェニックスの好演もあって、コモドゥスという人物は生き生きとした魅力的なキャラクターになっているのだけど、この「魅力的」のニュアンスはいわゆる“魅力的な悪役”のそれとは微妙に違う、むしろ主人公に据えられるべきそれで、方向間違えちゃってる感じなのだな。主人公の敵討ちの物語とコモドゥスの人物造形が衝突してしまっていてどうにも良くない。
それにしてもほあきん可愛い……。『ブラザー・ベア』の大きいほうの熊の声はこの人がやるそうで、だったら観に行かなきゃなあと思う所存です。