ジェフリー・ディーヴァー『ボーン・コレクター』

海外物かつ上下巻の長いお話ながら、読みやすい翻訳のおかげでするする読めた。リーダビリティに関しては楽に合格点をクリアしていると言っていいな。んー、でもなんだか。ちょっとばかし「事件は会議室で起きてるんじゃない!」的な感慨を抱いてしまう。犯罪捜査の中でも鑑識の部分にスポットを当てて描く隙間系(でもないかな)ミステリという趣向はいいと思うけど、こんなに鑑識が全て見通してしまうような展開にするならもっと感情的にも納得させてほしいのだなあ。主役格で探偵役のほぼ全身が麻痺した元ベテラン鑑識官にとても感情移入する隙がなくて、そこのあたりがどうにも不満だ。この鑑識官の魅力の無さによって、彼に執着する犯人、及び彼との間に濃密な関係を築いてゆく美人刑事のキャラ造形にも連鎖反応的に説得力が欠けてしまっている。ああ、勿体無い。美人刑事のキャラなんて単独では悪くないのに。
犯人の正体に関しては納得。こういうミステリの王道を行く意外性演出は好きだ。あと、ラストのお約束・予定調和的な落とし方も悪くない。美人刑事が窓からアレを投げ捨てる絵面はベタではあるものの綺麗。ああ、終わったなあ、という感じを味わえる。