小林泰三『家に棲むもの』

ホラー短編集。この作者の作としてはわりと薄味かな。収録作はもうちょっと少なくてもいいからそのぶん一編一編がもう少し長かったら良かったかも。この長さだとちょっと物足りない。でも、顔にこんにゃくをずりずり押し付けてくるようなイヤーな読み心地はやっぱり変わらず。
集中の個人的ベストは「肉」。オチがつく後半よりも主人公が聞き手と読者への嫌がらせ的なグロ話を延々と語る前半が好き。こういう、ある部分において自覚的にパラメータ配分を誤った話を何食わぬ顔で語る、って話がこの作者の真骨頂だよなあ。他には粘性強く飛躍する会話で魅せる「食性」とかオチが読めるな、と思ってたらもう一捻りしてあった「森の中の少女」等が好み。