大倉崇裕『七度狐』

んー、あんまり面白くないかも。横溝パロディ系の筋立ての本格ミステリなんだけど、せっかく舞台が閉鎖的な田舎の村だってのに殺人が起きるのはそこに滞在中のよそ者の落語家一族の中でだったりして、この無意味な二重のクローズドサークルはなんなんだろう。と言うか、主人公が疎外感を味わったり閉鎖感を感じたりするのはほとんど落語家一族が形作るクローズドサークルによるもので、村の共同体のほうは(心理的な意味では)クローズドサークルとして機能してない。勿体無いなあ。あと新しい事件が起こるたびに探偵役が小出しにして教える“見立て”ってのもどうよ。本来見立て殺人というネタに含まれる興趣ってもんが全く欠けてないか。
あと、二人の探偵役がやたら態度デカくてちょっと腹立ったなあ。理不尽なことで怒鳴りつけられる駐在さん可哀相、と思ってしまった。だもんで、真相解明場面に爽快感が足りなかった。まあ意外な人物の意外な正体についてはそれなりのサプライズがあったけど。動機についても僕にはあまり説得力もロマンも感じられなかった。犯人を“怪物”に描こうとして失敗しているように見えてしまったものだから。
なんだか貶してばっかりだ……でもこの作者は好きです。たぶん。