イヴァン・ヴィスコチル/カリンティ・フリジェシュ『そうはいっても飛ぶのはやさしい』

チェコ人作家とハンガリー人作家二人の短編を一冊にまとめたよくわからない形態の短編集。これは断然イヴァン・ヴィスコチルのほうが好きだ。いや、比べても仕方ないんだけど、とにかく素晴らしい。表題作なんか題名からして良すぎ。翻訳者よくやった!なんとも掴み所のない作風なのだけど、批判性を含んだ寓話と見せかけて、実はそんなことどうもでいいふうに終わる、という傾向があるように思われて、そこが好き。例えば表題作なら、主人公がボムスを弾けないことに気づく場面の哀しさ、ラストシーンの絶望を含んだ美しさ、どちらも絶品。
えー、あとフリジェシュのほうですが、こちらも別に悪かないんだけどあまり印象に残らなかった。強いて言えば「ドーディ」が好きかな。こんなに寂しい「死」の書き方はそうはないと思う。