西澤保彦『黄金色の祈り』

文庫落ちしたので読んだよ。これは、西澤自身の自伝的要素が少し入ってるとか入ってないとかな青春……小説、らしい。と言ってもそこは西澤保彦、これも主人公のうざったい自意識過剰さと執拗なまでの自己欺瞞が入った語りを延々と読まされる、という趣向のもので、語り手の“嫌な奴”っぷり(しかも本人無自覚)が強調されてる痛々しい小説。
でも僕はこういう西澤とか東野とか若竹とかの小説に出てくる“嫌な人”ってあんまり嫌じゃないんだよなあ。どうせフィクションだし、と思えてしまうと言うか。そういうキャラクターが出てくることに対するエンターテイメントとしての必要性がわかりやすいだけに、どうも切実な問題として捉えられなくってね。
まあそれを置いておけば面白い小説だった。ラストにおいて、「絶望」を描くよりもあくまで美しい情景(勿論それは青春の醜さあってのものだけど)が残る読後感になってるとこが好きだ。