ジャック・フィニィ『ゲイルズバーグの春を愛す』

これはハヤカワ文庫FTから出てるのだけど、なんとなくSFっぽい感じもありつつ、わりと境界線上っぽい。表題作が代表してるように全体的にノスタルジックな雰囲気の短編集で、作者の現実に対しての「こうだったらいいのに」っていう気持ちが滲み出てるような感じ。かなりセンチメンタルでしかも微妙に諦め入ってる作風は好みなんだけどストーリーにもう少し捻りがあったほうが好きかも。
集中の個人的ベストは「大胆不敵な気球乗り」か。気球に乗ってるときとそれ以外のときでは違う人に見えたりもするってな話で、感覚を共有するとは〜みたいな。恋愛感情ってのはこういうもんでしょう。後は「時に境界なし」の愉快な感じ(警部の人格が素敵だ)とか、「おい、こっちをむけ!」のもう全くダメダメな感じの非生産的なセンチメンタリズムも好きだ。