岡本賢一×笹生撫子『趣向』

次にこっちを読んだ。こちらは正統派耽美小説の系譜に連なる感じ。中島梓とか森茉莉とか好きな人は気に入るんじゃないだろうか。二人の作家による共作が一編、それぞれの作家単独で書いた短編が一編ずつ収録されているのだけど、どちらかと言えば笹生撫子の作風のほうが僕の好みであるようだ。
収録作中の個人的ベストは笹生撫子が単独で書いた「庭園」。鋼鉄でできたたくましい体つきの可動人形を操縦する主人が、その人形の手入れをする役目の下働きの少年を人形に惚れるように仕向ける、というとても倒錯的な始まり方をしたので大いに期待していたら物語は二転、三転して……えーと、もしかしてこれは非常にねじくれた相思相愛の形と言えるのでは。ひねくれててナイス。
競作の「趣向」もラストの締め方が良い。一度もいわゆる本番行為に及ばないところがまさに耽美。倒錯してるなー。でもこれ、初期設定では少年の相手は皇子じゃなく皇妃だったそうだけど、絶対そっちのほうが良かったと思う。岡本賢一の「塔」は少年と美少年の恋の話として王道すぎてちょっと面白みに欠けるかな。この短編集全体として、特異で面白い部分はあまりないけど正統派の楽しみがある。