『大江健三郎全作品 第Ⅰ期 1』

うははは。何故今自分は大江を読んだのだろう。しかも全集本で。全集本って字が詰まってて読みにくいのよな。でも一応評論以外は全部読んだ。
収録作の中で面白いと思ったのは「他人の足」「偽証の時」「人間の羊」「芽むしり 仔撃ち」あたり。「他人の足」は妙に健康的になった病棟内の雰囲気が元に戻ってしまうきっかけがあの出来事ってとこが面白い。そんなふうに結局元に戻ってしまったことに対して主人公が嬉しくも悲しくもない、実に微妙な気持ちでいるところも。「芽むしり 仔撃ち」はとにかくタイトルが良い。あとは脱走兵の人物描写及び、ええー主人公とそんなことを?ってあたりが。終り方のいかにも純文っぽい感じはあんまり印象が良くなかったけど。
一巻通して読んで思ったのは、なんだか欠伸の描写が多いなあ、ってこと。欠伸をして涙が出るって描写も同じくらい多い。この欠伸の件はもしかして「大江と言えば欠伸」って感じで有名なことなのかね。でもそれらの欠伸はいい効果を生み出してると思った。それはたぶん、虚しさのようなもので、それもゆっくりと着実にやってくるようなものではないかと思う。