鳥飼否宇『本格的 死人と狂人たち』

うわーい。久しぶりに地雷本然とした地雷本を読んだよ(地雷本という言葉は思考停止を招く場合が多いように思うのであまり好きではないのだがここではこの言葉を使っていい気がする)。何と言うか、調子の悪い東川篤哉または石崎幸二が柄にもなくちょっと変わったことをやろうとして思いっきり失敗した、という感じの小説で、全体的に清涼院流水とか鯨統一郎を思い起こさせるような「作者暴走、読者ついていけない」風味が味わえる。いやしかし、これに比べれば御大も鯨も彼等なりの論理に基づいた作品作りをしているのが窺える点でずっとマシなのでは、と思ってしまうなー。
と言うわけで、繰り返しますが地雷本です。それもかなり悪い意味で。しかもこれ、長編小説かと思ってたら連作短編集だし、カバー折り返しのあらすじは最初の一編のみにしか当てはまらないし、それにこれが本格ミステリの叢書たるミステリー・リーグから出てるっていうのが……いろんな意味で「騙された!」という気分を味わえて、なんか、気持ちが良いと言えないこともないかも……うわっ、大丈夫か自分。とにかくツッコミどころが多すぎてとても書ききれないよ!でも一つだけ言うとすれば、殺人現場から被害者の下着を盗む探偵役って……。
まあそんな感じで、この作品を好きか嫌いかの二択を迫られたら、「好き」と答えてしまいそうな自分が怖いです。あわわー。でもところどころに見られる弱体化した石崎幸二のような脱力系ギャグ(のつもりかどうかは謎だが)はけっこう本気で好ましいのだけど……。この作者の他の作品はもっとまともであることを祈るばかりです。ほんとに。といったところで、富山君と秋山君萌えー、とか書いてお茶を濁して終りたいと思います。


あ、前期試験の回答は丸田教授で合ってると思うのだけど、どうでしょ。