芥川龍之介『お富の貞操』

ＴＮＭで話題に取り上げられていたので読んでみました。さすが芥川だけあって安定した面白さ。こういう台詞回し好きだなあ。なんと言うか、芥川って女性をある種得体の知れないものと捉えている感じがあるような。いやそんなに芥川作品を読んでるわけでもないのだけど。
で、問題となっているお富が新公に身を任せた動機ですが、これはやはり言葉にしてしまうとつまらなくなってしまう類のものでしょうね。読んだ人がなんとなーく心に思い描けばいいものであって。でも言葉にしてしまいたい気持ちはよくわかるということで、僕は「なんとなくドラマチックな気分になったから」ってふうに受け取りました。全く何の説明にもなってないですが。
新公に再会したときのお富の心境がまたいいですねえ。過去の自分を正当化してるっぽくて。それがまた“女の可愛げ”につながってる感じなのが秀逸。良い。