ドナルド・E・ウェストレイク『弱気な死人』

バカな奴が身の丈に合わないことを目論んで失敗してヒドい結果に、という類の話は好きなんだけど、どうもそういうのじゃなかったらしい。主人公は次から次へと困難に巻き込まれ、新たな追っ手もどんどん増えるんだが、それらは全てわりあい平和に切り抜けられてしまうのであった。
運が味方してるせいか、主人公がバカなりに分をわきまえているせいなのか知らないけど、普通なら主人公を追い込んで盛り上げるべき展開をスッスッと外して物語を転がしてゆくこの書き方はおそらく意図的にやってるんでしょうな。変なことやってるなあとは思うものの、特に面白くはなかった。あ、主人公の偽名がどんどん増えていって収拾つかなくなりそうになるのは面白かったけれど、あれも結局収拾ついてしまうのが何とも。