浅暮三文『ラストホープ』

釣具店「ラストホープ」を経営している元宝石泥棒の東堂、刈部の元に、ある日、多摩川の山女魚を釣り上げてほしいという謎のファックスが届く。しかし山女魚を釣る度に何者かに襲撃され、二人は依頼人について調べ始めるが……というお話。
やたらに映画っぽい叙述の仕方と、不自然なほどセリフに頼った話の進め方(登場人物はどいつもこいつも独り言多すぎ)がなかなかに魅せてくれて楽しめた。コメディ調なんだけど軽妙になりすぎない、どこか乾いたセリフ遣いがいいのかな。三つ巴(それ以上?)の騙し合戦がゴチャゴチャしないで読めるところとか、無意味な伏線の置き方には感心。
不満な点を挙げるとしたら、東堂に視点が寄りすぎなことかな。個人的に刈部側の事情がもっと知りたかったってだけで、キャラの立たせ方には全く文句がないのだけど。