サラ・ウォーターズ『荊の城』

『半身』は読んでないのでこの作者の本は初読み。下町のスリ一家で育った少女スウは田舎の城に住む令嬢モードに結婚詐欺を仕掛ける計画を手伝うことになるが、だんだんとモードに心惹かれていってしまい……というお話。わーお、聞いてた通り百合百合*1だ!スウが指抜きでモードの歯を擦ってやるシーンなんて、なんてことない出来事なのに凄まじくエロティックで息を呑んでしまうくらい。百合モノとしての展開は第1部が終わった時点で想像ついてしまい、第3部ともなるとまだるっこしく感じてしまうのが少し不満であるが。
ミステリとしても、第1部のラストと伯父さんのコレクションの秘密という二大サプライズの使い方が巧くって楽しめた。モード視点で語られる第2部は要は“種明かし”なんだがそれだけじゃないというあたりが歪に綺麗。あとはまあ、サクスビー夫人が中途半端に重要キャラだったりするのとか全部やめて、主役二人のロマンスに専念してくれてたらたぶん僕にはもっと素敵だったかな。