ヤン・マーテル『パイの物語』

えー、オチこれだけ?「衝撃のラストシーン」(帯より)には程遠い気が。ミステリサイト周辺でも評判良かったし、かなり期待してたんだけどなあ。ちょっとがっくり。
前半のちょっと変わったインド人少年の生い立ちを語る部分は大して面白くなくて、読者を引き込む力に欠けるんじゃないかという感じのものではあるものの、中盤以降、少年の漂流記を語る部分は確かにそれなりの強度と魅力を持ったもので、ある程度楽しめる。トラが少し可愛く思えちゃうくらいだ。トラへの対処の仕方の描写はしつこいんじゃないかという気もしたけど。
でもこのオチはそういう冒険小説としての魅力を矮小化しかねないものであるような。そして最後の「どちらの物語が〜」っていう問いかけは更に野暮な気が。聞くな!そんなこと。まあでも冒頭からしてよく考えれば相当に胡散臭い入り方をしてる物語だから、作者は全部冗談でやってるのかな、もしかして。どっちにしてもあまり楽しめなかったことに変わりはないのだけど。
さて、後はM.ナイト・シャマランがこれをどう映画化するのかが楽しみだ。インド人が主人公だからシャマランなのか、もしかして。