ジョン・アーヴィング『サイダーハウス・ルール』

さすがに読むのにそれなりに時間がかかったけど、いやあ、読んでて楽しいなあ。一文一文読み逃せなくて、無意識に斜め読みしてしまった部分とかを読みに戻らずにいられない楽しさ。アーヴィングの本を読む楽しさの中には読書の愉しみに含まれる要素のかなりの部分が網羅されてるんじゃないかと思う。まだ二作しか読んでないでいうのもなんだけど。
楽しい楽しい言っといてなんですが、この話はこないだ読んだ『ホテル・ニューハンプシャー』(→感想)が悲しい出来事もいろいろ起こりながらも、家族の強い絆の存在によって常に希望が見える感じで終始わりとハッピーに読めたのとは違って、読んでて辛い部分がかなりある。物語の冒頭部分は『ホテル(略』と同じように孤児院の面々の強い結びつきによってもたらされるハッピーな感じを味わえるのだけど、主人公ホーマーが孤児院を出てからはどんどん話が辛い展開に……。ほとんど昼メロのようなドロドロの男女模様を根底に置きながらも、でもみんな愛し合っていて、お互いを大事にしているという構図が読んでて物凄く居た堪れない。要は恋愛感情が“絆”に勝ってしまったことから来る苦しさなのだけど、これは辛いなあ。読んでて楽しいんだけど、とても辛い。
でもやはりと言うかなんと言うか、ラストはハッピーを感じさせる終わり方をしてくれて、これは最後には“絆”が勝ったってことなんだろうか、とも思わせる。何はともあれ、みんな正しいところに片付いた感じがして、僕は嬉しい。とりわけホーマーが結局のところ“ヒーロー”になったのがとても嬉しい。時々思い出して泣くかも。嘘だけど。