テッド・チャン『あなたの人生の物語』

面白い。けどいろんなところで比較されてるのにつられてイーガンと比べてしまうとちょっと落ちるかな。つってもイーガンも『しあわせの理由』しか読んでないわけですが。
なんでイーガンより落ちるかって言うとイーガンのほうが幻想度が濃い感じがして、僕は幻想が強いのが好きだから、というふうになるか。あと、イーガンのほうがストーリーがどこにあるのかわかりやすいってのもあるな。チャンはストーリーすら逸脱してひたすらネタを深くふかーく描写し掘り下げてゆく、ってことが多いような気がする。まあどっちがいいかは好みの問題だけど。
集中の個人的ベストは、『バビロンの塔』か『地獄とは神の不在なり』あたり。『バビロンの塔』はネタ‐オチの関係と言うか流れがすごくわかりやすくって馬鹿っぽいところが好きだ。これはオチを途中で予想したかった。『地獄とは神の不在なり』はとにかくこういう唐突な世界観が何食わぬ顔で提示されてる話が好きだってことで。話の結末がどうでもよくなるくらいに。
他にも『理解』の暴走っぷり(途中まで誇大妄想だと思ってた)とか『ゼロで割る』のこんなに特殊な話なのに普遍性があるよ!な感じとか『顔の美醜について』におけるわかりやすいネタの提示の仕方とか、全体的にひじょーに興味深かった。みんな面白いって言ってるだけあるなあ。