霞流一『おなじ墓のムジナ 枕倉北商店街殺人事件』

霞たんのデビュー作(のはず)。この人はデビューからずっと動物をお題にしたミステリを書き続けてるのだけど、この作品でお題になってるのはタイトルからもわかる通りタヌキ。タヌキ絡みの事件が続発するって趣向ですな。
で、これがそれなりに面白かったわけなのだけど、この人の作風として、盛り上がるべきところでもほとんど盛り上がらない、かと言って特に盛り下がりもしないし、悲しいシーンも楽しいシーンもほとんどなし、な「ずーっと平熱」とでも言うべき性質がこの作品では珍しくいい方向に作用してる印象。いつもはその性質が「退屈」とか「中途半端」にしか繋がらないのだけどねえ。これは結果的にほのぼのとした感じになってて、悪くない。こういうのも書けたんだ、この人。
しかしこの人はバカミスの第一人者みたいに言われてるわりにバカミスとしてはぬるいことこの上なし!なのがちょっと気に食わなかったのだけど、「平熱」なバカミスを量産できるってのはけっこう杞憂な才能かも、という気がしてきた。たぶん気のせいだが。