天沢退二郎『ねぎ坊主畑の妖精たちの物語』

児童文学界のカリスマ・天沢退二郎の短編集。ちなみに僕はこの天沢三田村信行を児童文学界の二大トラウマ製造機と呼んでいます。
で、この短編集ですが、完成度が高いという概念を体現しているような物凄さ。でもやっぱりこれを子供に読ませるのは危ないような気がする。ダーク過ぎるし濃密過ぎる。
集中の個人的ベストは「夜の道」。オチの異様な感じの怖さもすごいけど、主人公に次々と話し掛けてくる怪しげな妖精やら何やらが実に魅力的。まさに密やかな夜の騒ぎといった印象。最初三十過ぎだと思ってた主人公が中学生だったのにも驚いたけど。
あと、「杉の梢に火がともるとき」のシュールな要素の説明されなさ、オチのつけ方も大いに気に入った。「ぼくの名前は」か。世界の秘密事みたいな感じ。
「人形川」とか「グーンの黒い地図」はこの作者の代表作『光車よ、まわれ!』に似た話なんだけど、それほど印象に残らず。リーダー格の女の子が可愛くない傾向は相変わらずな模様。
とにかくすごい本なので、読んで感銘を受ける人は多いと思います。