ボーン・アイデンティティー

銃弾を受けて波間をさ迷っていたところを漁師に拾われた主人公には一切の記憶がなかった。臀部に埋め込まれていた銀行名と番号を頼りに自分探しの旅に出る彼だったが、次第に自分に備わってる驚異的な能力に気づいていく……というお話。
ツッコミ所を一つずつ丁寧に回避していくような頭の良さを見せる映画で、主人公やヒロインの心情がわからん、と一旦は思っても最後まで見ればそれも“リアルな心理描写”の一環だということで言い含められてしまう小憎らしさ。いやでも、終始落ち着いたムードのアクション映画ってのもなあ。パニックに陥って喚き立てるような人が一人くらいいてもいいのに。アクションシーンについては「(全然強そうでない)マット・デーモンが演じてると普通のアクションでもすごいことやってるように見える」という効果が最初はあるのだけど、すぐ慣れてしまってわりと退屈。
主演のマット・デーモンについてはちょっと判断しかねる部分があるので置いておくと、キャストは概ねあまり魅力的でない。ヒロインのフランカ・ポテンテは老け顔の上に演技が鬱陶しいし、敵役のクリス・クーパーもなんだか勿体無い使われ方をしているという感じ。ただ、“教授”というコードネームの狙撃者を演じたクライヴ・オーウェンは抑えた色気があって良かった。メガネ好きならグッと来るでしょう。