乾くるみ『リピート』

ある日のある時間、不思議なオーロラの中に飛び込むと意識だけが十ヶ月ほど過去にタイムスリップする。この現象を既に体験済みの男に誘われ、“リピート”してみた僕達だったが、何故かリピート先の世界で一緒に来た仲間が次々と変死を遂げ……というお話。
連続死の構図がクルッと反転する捻りの利いた真相は確かに鮮やか。でもその後の諸々の展開は全部“イヤーな人間達が醜い争いを繰り広げる様”を描写するのに奉仕していて、いまいち気が乗らなかった。大体最初っから主人公を始めとする登場人物がイヤすぎる。リピートを経験したことで“勝ち組”になった気になる、というくだりなんてもうげんなり。西澤保彦あたりのエンタメ性重視な嫌人間描写もあれはあれで引っ掛かる部分があるのだけど、この嫌なリアリティよりずっとマシだな、と思わせられた。
何より一番問題なのはこれ、あんまり乾くるみっぽくないのですよ。僕はこの人のどこまで意図的にやってるのかいまいちつかめない感じが好きなのに、これだと普通に巧いだけになってしまってる気がしてしまって。こういうのは見苦しいファン心理の一種だろうけど、とりあえずそう思ったということで。

id:minkoさんからリファが飛んで来た*1ので飛ばし返し。LA4部作は周りの人にも薦められているので、機会があったら読もうと思ってますよ。楽しみにしておきます。
で、僕映画『LAコンフィデンシャル』は見てないんですよね。こちらも見たいとは思ってるんですけど。ガイ・ピアース好きだし。